あの日、おれは夕食の直前まで静かな神を抱いていた。
神は数日後に小さな壺に入った。
その壺が入っている箱と、伏せた体勢からこちらを見上げる彼の写真の周りは、彼が気に入っていた遊び道具や彼の首輪で飾った。
「神さんも行っちゃったね」
神の写真の前で手を合わせたあと、母親は小さく言った。
「神さん、早いよ。おちゃまるさんはまだまだ元気なのに……」
だけどありがとう、と残し、母親は普段作業している椅子へ戻った。
しかし神が眠ってから、彼女がそこで作業をしているところは見ていない。
母親が作業を再開した頃、おれにも小さな変化が起こった。
なにゆえか、神(かみ)という存在を身近に感じるようになった。
同時に、自分にはいかなることもできるという感覚も芽生えていた。
やがてその二つは繋がり、おれに自分は神であるという錯覚を起こさせた。
そんな思い込みをする自分が気持ち悪くて仕方がなかった。