「ところで入野、親父さんとはどうだ?」

席に戻って問うと、入野は苦笑した。

「本当に、わたしに関してはそれにしか興味がないのね」

「いや……そんなことはないけどさ」

「じゃあ他にわたしの興味のある部分は?」

「えっと……あの……」

ないじゃないのと苦笑する彼女へ、ちょっと待てと笑い返す。

「別にいいわよ、無理に興味を持ってくれなくて。本気で興味を持ってほしかったら、いろいろ頑張って興味を持ってもらうから。

お父さんとは、まあまあよ。時々、薄っすらと不穏な空気が漂う感じ」

「……不穏か」

「まあ、あまりに執拗に言ってくるものだから、向こうもいらいらしつつあるんじゃないのかしら」

「なるほどな……」

「まあ、今になって不安になってきたのが、お父さんが口を利いてくれなくなることね。そうしたらまた振り出し。むしろもっと後ろかも」

「そうだな。うまく加減しろよ」

「ちょっと。最悪の場合には助けてくれるっていう話だったじゃないの」

苦笑する入野へ、「もちろん助けるよ」と返す。

「だけど、ある程度は自力で頑張れ。入院中の病院みたいなものだ。ちょっとやそっとでは薬出さないだろ?」

「幸せなことに病気とは無縁な生活を送ってきたものでね。よくわからない」

「そうか」とおれは苦笑した。

「まあ健康ならなによりだ」