放課後、ざわめきの中でおれは入野を呼んだ。
なに、と彼女はこちらを向く。
「校門まで……一緒に行っていいか」
入野は驚いたようにぴくりと目を見開いた。
「……いいけど」
「入野は……馬鹿な男ってどう思う?」
昇降口へ靴を放り、おれは問うた。
隣にローファーが放られる。
「馬鹿な男? まあ……今は嫌いじゃないわ」
入野は靴を履きながら答えた。
同じようにしながら、「そうか」と返す。
昇降口の外はじっとりとした空気だった。空には厚い雲が広がっている。
「じゃあ、一つの特技のようなものを除いたすべての知識がない男は?」
「それ、さっきのと変わらないじゃない」
入野は笑いながら言った。
「別に、嫌いじゃないわよ」
「じゃあ、鈍感な男ってどう思う?」
「鈍感……ねえ。すっごくいらいらする、かしらね。こっちはこんなにアピールしてるのにどうしてわからないのって。そして殴りたくなる」
おれは「そうか」と苦笑した。
日頃殴られる理由がわかった気がした。