「廉くん、容姿に自信はあるかい?」
「なに、急に。別に自信なんかねえけど」
「ふうん。廉くんが結構、女の子人気があるというのは知ってる?」
「いいや」
宮原はため息をついた。
「そういうことだよ」
「……そういうこと。どういうことだ?」
「しっかしこういう分野には弱いんだね、その頭は。よく知っているのは囲碁の勝ち方だけかな」
「まあ、否定も肯定もしないけど」
なんだろうなあ、と宮原は頭を抱えた。
「そんなにわからないものかなあ。なんでこんなにわかんないかなあ……」
「わからないものはわからない。英語で二人称をユーと言う理由のようなものだ」
「そんなに難しいかい?」
宮原は驚いたように言った。
これほどわかりやすいのに、ありえない、と再び頭を抱える。
「まあ僕にできることは、ただただ入野さんを応援することだね。めげないように」
「おれが入野の言動の意味がわかるように願うという方法もあるぞ」
「廉くん程度の馬鹿はもう、願ったって治るものじゃないよ」
馬鹿というか鈍感という方が正しいのかな、と宮原は呟いた。