「痛い。ちょっと待て、入野の六倍は痛い。宮原お前、特訓してんのか。入野に頼まれたか」

「くだらないことばかり考える頭だな、まったく。廉くんがここまで空っぽな脳みその持ち主だとは思わなかったよ」

「おれ、最近他人が理由がわからないうちに怒ってることが多いんだ。今の宮原もそうだ」

「本当にどこまでも馬鹿だね、廉くんは。僕以上なんてものではないよ。

なにを食べていたらそれほど馬鹿になるんだい? 日常的に食べているものがあるのなら、僕は今後一切それを食べないようにするよ。たとえ大好きなものだったとしてもね」

「……おれ、そんなに馬鹿か?」

「学問的な意味ではわからないけど、人間としては限りなき馬鹿だよ。馬鹿という言葉では表しきれないほどの馬鹿だよ」

「こんなに真剣に馬鹿だと言われたのは初めてだよ」

おれは苦笑した。

「それならきっと、他の人は廉くんが馬鹿すぎてなにも言えなくなったんだろうね。

もういっそのこと、入野さんの言動の意味を僕から伝えてしまいたいところだけど、それは入野さんのためにはならないだろうからやめておくよ」

「ふうん……。おれに直接伝えることで、入野が成長するようなものってことか」

「成長というか……」

宮原はふうと長く息をついた。