「もう……入野さんがかわいそうだよ」

昼食中、宮原は言った。

「そうか?」

「なんでそんなにわからないかね。本気? わざとでしょ」

「なにがだよ」

「なにがって……。えっ、まさかだけど、本気なの?」

「本気も手抜きもよくわからないが、どちらかといえば本気だ」

「本当に廉くんは入野さんの言動の意味がわからないのかって言ってるの」

宮原は怒ったように声に力を込めた。

「わからない。それより、やつの言動になにか意味が込められてるのか?」

「意味っていうかさ……」

「入野はおれにわかってほしいものがあるってことか? それも、直接は言い難いもの……」

「そうだよ。やっとわかったか」

宮原はやれやれとでも言うようにため息をついた。

「なんだろう……」

おれはペットボトルを開栓しながら思考を巡らせた。

将来の件は順調に進んでいると言っていた。

「……しかし、そうではない――ということか?」

「なんかよくわからないけど、僕の思っているこれとは違うことに気づいてしまったようだね」

宮原は苦笑した。

「僕の思う限り、入野さんの言動の意味は、かわいいかわいいものだよ。実にかわいいものだ」

「実際はうまく行っていないが、彼女なりのなにかでそれを隠している――。確かにかわいくないことはないな」

言ってペットボトルの中身を飲むと、蓋を閉めている間に宮原はおれの脛を蹴った。