彼女はおれの隣まで走ってくると、手に持っていた毛布を神に掛けた。
神(じん)――。幾度も繰り返した。
やがて、神の呼吸が少しばかり強くなった気がした。
「神。神、頑張れ」
「神さん……」
母親の静かな声も、微かに震えていた。
神がおれの膝の上で小さく動く。
「神、そうだよ。頑張れ」
神の名を呟くと、彼を包む毛布が落ちた涙を弾いた。
「神、頑張れ」
繰り返し動く神へ声を掛ける。
不意に神が大きく動き、立ち上がるのではと淡い期待を抱いたが、彼はそのままふわりと体勢を直した。
「神……?」
「……神さん、おやすみかな」
母親は小さく発した。
「神……」
おれは微かに温もりの残るような神の体に毛布の上から顔をうずめた。
静かな彼を強く抱きしめる。
「神……ありがとう、ありがとう……」
「神さん、ありがとう」
母親は隣から神の頭を撫でた。