「で、将来の件はどうだ?」

おれは荷物の片付けを済ませて隣の席に着いた入野に問うた。

「最近、紫藤そのことしか訊かないね」

「まあ、それが一番気になるし」

「ふうん、つまらないの」

入野は拗ねたように言った。

「面白いやつになるのが夢ではない」

入野は苦笑した。

「お父さんとは、まあ順調かしらね。紫藤が味方にいることを前提に、だけれど」

「安心しろ、おれは人のためになれる者になりたいんだ。この機会を逃すことはない」

入野はふっと笑った。

「本当に、無駄に優しいのね」

「さあ、自覚はないが」

「大丈夫、周りの人はあったら嫌だから」

それもそうかと思った。

「紫藤ってさ、本当に自分のためには、その念じたことが現実になるっていうのは使わないの?」

「ああ。自分だけのためには使わない」

「自分だけというと?」

「他人の幸せが絡んでいなければ使わない。前にも言わなかったか」

「聞いたような気もするけど。わたしのような性悪女にはどうにも理解できなくてね。

別に、フィクションの世界のように回数が決まっているなどというわけでもないんでしょう?」

「たぶん。まだまともに使ったことはないからわかんないけど」

「その力絶対じゃないの?」

入野は驚いたように言った。

「いや、問題ない。試行では十割叶った。それに、その試行ではこの力の弱点もわかった。だからそれを解消すべく、おれは必死こいて入野の不満を具体的に聞き出した」

ふうん、と入野はいまいち納得しない様子で頷いた。