月曜日、廊下へ上履きを放ると、女子用のブレザーの袖に後ろから抱きつかれた。
「だあれだ?」と低い声が続く。
「……男」
声の主は「馬鹿」とおれの背を殴った。
「いってえ。強いんだよ。貴様、今絶対指一本立ててたろ。それより馬鹿は貴様だ、そんな声で本気で男だと思うやつがいるか」
入野はおれの後ろで上履きを履いた。
「なんかわたし、紫藤で遊んでるときが一番楽しい」
「それは大変だ。写真には飽きたのか?」
「突っ込んでほしかったのそこじゃないんだけど」
入野は言いながら歩き出した。
おれはその隣に着く。
「わたしは紫藤で遊んでるときと言ったの。『で』に突っ込みなさいよ」
「安心しろ、そこも充分に引っかかった」
入野は微かに表情をやわらげた。