しばらく互いの学校の様子を中心に話したあと、おのっさんは「おらそろそろ帰るわ」と腰を上げた。
「おお、そう?」宮原が言った。
「言ったろ? おらの学校、宿題馬鹿みたいに出しやがるって。加えて先生めっちゃうるさいからサボるわけにもいかねえんだよ」
じゃあなとドアの方へ向かう彼を、おれは「あのさ」と呼び止めた。
「どうした?」
「また機会があったら、相手してくれないかな」
おのっさんはふっと笑った。
「しゃあねえな。じゃあ、気が向いたらな」
「ありがとう」
「おのっさん、珍しく負けたものだから傷ついてるの?」
宮原はいたずらに笑いながら言った。
「あほ、おらがへこむわけねえだろ。今回負けたのはたまたまだよ、ばーか」
次はおらが圧勝だと残し、おのっさんは部屋を出た。
気をつけてなと宮原がその背に手を振る。にやりと笑ってこちらを向いた。
「おのっさん、内心結構本気でへこんでるよ、あれ」
「……大丈夫?」
「大丈夫の意味がわからないけど、おのっさん、『あほ』とか『ばーか』って言ったでしょ? おのっさんがああいうこと言うときはね、感情的になってるときなんだ」
「へえ。わかりやすいんだな」
「廉くんも負けてないけどね」
いやあ次の対局が楽しみだな、と宮原は伸びをした。
「たぶんおのっさん、強くなって帰ってくるよ」
「……それは困った」
久しぶりにあのゲーム機が動くこととなりそうだと思った。