互いの意地を理由に、石の色は一度目の対局と同じものにした。
結果、僅差でおれが勝った。
「へえ……。強いんだな、悔しいけど」
「途中、何度もはらはらしたよ」
「そんくらいはねえとおらが辛い」
言わなきゃよかったなと笑うと、言ってくれてよかったとおのっさんも笑った。
「そういや、レンは宮原と同じ高校なのか?」
「そうだよ」宮原が言った。
高校に入ってから知り合ったんだとおれが続く。
「へえ」
「宮原とおのっさんは?」
「おらたちは幼なじみってやつ? そう、中学まで一緒だったんだ。ずっと囲碁やってたよな」
「そう。おのっさんに勝ったの、二回くらいしかないんだよ、僕」
「お前弱いんだもん。レンが誤解しねえようにとりあえず言っておくけど、宮原が勝った何回かはおらが手加減しての結果だからな」
はいはいとおれは苦笑した。
「おのっさん、高校はどこ行ってんの?」
「あっちの第一。一高」
おのっさんは後方を親指で示しながら言った。
「レンたちは三高だろ?」
「そう、おれたちは三高だよ。一高なんだ。そんなに遠くないんだな」
「まあな。でもおらも三高行きたかったんだよ。けどよ、先生がお前には無理だとか言うからよ」
「へえ」
「宮原のやつ、勉強に限ってはおらよりできるからさ」
囲碁も運動もおらの方ができるのにとおのっさんは不満げに続けた。