毎度当然のように異常なしと告げられた定期検診で神に異常が見つかったのは、おれが十四歳になる年のことだった。
獣医師に従った上、家や本屋でいろいろな情報を集めては良さげなものを実行した。
おれは学期末、テストが絡んで下校時間が早かったその日、可能な限り早く通学路に自転車を走らせた。
家に着き、適当な位置に自転車を置いては玄関の鍵穴へ鍵を突っ込み、反時計回りに回す。
勢いよく扉を右に引き、中で靴を脱ぎ捨てリビングへ入る。
神、と叫ぶと、机で作業をしていた母親が「おかえり」と笑顔を見せる。
「ただいま。神は元気? 起きてきた?」
言いながらリビングを見回すと、神が淡い黄色のベッドで寝ているのが見えた。
「今日は、ずっとあそこにいた」
母が言った。
「何回か声掛けて、そのときは反応してくれた」
「そうか……」
おれは足元に鞄を下ろし、名前を呼んで神の元へ寄った。
「神、ただいま」
神のそばに腰を下ろし、彼の頭や背を撫でる。
なんとなくいつもと様子が違うようにも感じた。
「神。おはよう」
おれは神の背に手を置き、彼の様子を窺った。
強い恐怖が湧き上がる。
「……母さん」
放った声は微かに震えていた。
神を静かに膝の上に乗せ、小さな呼吸を繰り返す彼を抱きしめる。
母親は察したか、静かにリビングを出て行った。