放課後、宮原の部屋で出した碁盤では、白の地が多かった。

「すごいなあ……。本当に強いね。負けたことある?」

宮原は言った。

「ないことはないだろう」

「本当? 廉くんに勝つ人なんてもう、本当のプロだよ」

ああそうだと宮原は手を叩いた。

「ちょっとさ、あの斜め前の家あるじゃん、あの家の人呼んでいい? 僕の友達なんだ」

「相手がいいなら別に……」

「その人もね、めちゃくちゃ囲碁強いんだよ。なんかふと、廉くんとの対局を見てみたくなって」

「怖い人じゃなければいいよ」

「大丈夫、怖い人ではないよ。ちょっと髪の色抜いてるけど」

宮原は携帯電話を操作しながら言った。

ちょっと待っててと部屋を出る。

おれは本当にやるのかと思いながら碁盤を眺めた。

この辺りは住宅街だ。斜め前に家があるのは知っているが、具体的にどんな建物かも記憶していない。

そこに住んでいる人のことなどなにも知らない。


「なんか今、近くのコンビニにいるらしい」

宮原はおれの前に座りながら言った。

「囲碁が強い人がいるって言ったら、すぐ向かうってさ」

楽しみだねと笑う宮原へお前だけだよと返す。