じゃあおれ腹減ったから行くわという宮原の言葉をきっかけに、彼と別れた。

今頃賑やかなミシンの音の中にいるのであろう母親へなんとも言えない気持ちを抱きながら、十キログラムの米を抱え、レジ付近の飲み物売り場から緑茶を取って会計を済ませた。


店を出て自転車の元へ行くと、「よう」と宮原の声が聞こえた。

「お前まだいたのか。腹減ったんじゃねえのかよ」

おれは荷台に米を積みながら言った。

「腹減ったよ。だからここで食ってた。ここで食いながら廉を待ってた」

「なんのためにおれを待つんだ」

「だってせっかくの再会だぜ? ちょっとは楽しもうぜよ」

「別に再会と言っても……まだ五年も経ってねえし」

「でもあれだぞ、一緒にいた時間はもっと長いぞ」

「馬鹿気持ち悪いよ」

「気持ち悪いくらいのものが真の友情ってもんよ」

「別におれは宮原と真の友情を築いたとは思ってなかったんだが」

おれは自転車の鍵を解除し、またがった。

「冷たいことを言うねえ、まったく。で、その荷台にくっついたでかいのはなんだ?」

米だ、とおれは緑茶を飲んでから答えた。

「米かあ。その大きさだと十キロか? ママチャリで米のおつかいとはこめったもんだな」

「……なんか羽織ってくるべきだったかな」

宮原は小さく苦笑した。