ああそうだ、と彼は手を叩いた。

「そういえばおれ、学校でレンって名前の友達ができたんだぜ?」

「へえ。おれもだ。宮原って友達ができた。下の名前もお前と一文字一音違いでな」

「へえ、すごいな。高校のレンは草冠に連絡の連って字なんだ。あまりお前と同じレンっていないよな」

「ああ……そうなのかな」

「ナダレに謙虚の謙の右側だろ?」

宮原は手のひらの上で指を動かしながら言った。

「まあたぶん、まだれだと思うけどな」

「えっ、おれなんて言った?」

「ナダレ」

宮原は苦笑した。なにかを思い出したように手を叩く。

「ああそうだ、一番話したかったこと忘れてたわ」

「……なに。くだらない神頼みなら断るぞ」

「ちょ、お前まじ真剣に自分を神だと思ってるのか? もう高校生活も残りの方が少なくなろうとしてる頃だぞ。

本当に願い事があるなら廉じゃなくて本物の神様にお願いするから安心しろって。

そうじゃなくて、お前こんなところでなにしてるんだ?」

「……ああ、そんなこと。言ったろう、鬼のような母親に、なんの変哲もないママチャリで勾配二十パーセントの坂を上って買い物に行ってこいと言われたんだ」

「ああ、そうなんだ」

「そう言う宮原こそなにしてる」

「おれは……なんだったかな。なんかあるっつって下校時間早くて、暇だったから。菓子と飲み物でも買おうと」

コンビニでいいじゃんと笑うと、スーパーの方が安いだろうがと同じように返ってきた。