「廉だよな?」
幼なじみの宮原はこちらへ寄ってきながら言った。
「おう……。まさか、会うとはな。しかも今日」
「おお。おれもびっくりだぜ。やっぱりこの辺に住んでる限り学校違っても会えるもんなんだな。うける」
「宮原……どこだったっけ」
「おれはあの、私立の花岡」
「ああ……あそこな」
おれが言うと、宮原は小さく苦笑した。
「廉、今馬鹿にしただろ。そうですそうです、おれは廉と違って馬鹿だからね」
「あそこ遠くね?」
「徒歩、バス、電車を使って数時間」
「小旅行じゃねえか。おれにはそんなの三年間も続けられない」
「しかもおれくらいになってくると三年間で卒業できるかもわからねえしな。
いいよなあ、廉は三高だっけ? 超頭いいところだもんなあ」
「決してよくはないよ」
ふと、宮原はなにかを思い出したように笑いだした。
「そういえばさ。廉お前、まだ神なの?」
ぎくりとした。顔が熱くなる。
思わず目を逸らすと、宮原は「なるほどね」と笑った。
「もう忘れたい病の束縛は解けたわけだな?」
「残念ながらおれはまだ神だ」
「またまたあ。お前言いながら顔まっかっかだぞ」
手の甲で頬に触れるとかなり熱かった。
うるせえと返すと、宮原はさらに笑いだした。
「おれは宮原の腹筋を鍛える機械じゃねえんだ」
「いやいや、でもさ。お前まだピアス着けてんだなって思って」
「ああ……。着けてるというか、外せないというか……」
そうだよなそうだよな、と宮原は腹を抱えて頷いた。