トランプが散乱した部屋で、おれたちは向かい合って互いの顔や髪の毛をいじった。
最後の一枚を同時に出し、結果は引き分けとなった。
「おい宮原、目閉じろ」
「閉じるものか。僕は作業中だ」
「中断しろ」
「嫌なこった。制限時間はたったの二分だ。百八十秒だよ」
「馬鹿野郎、百二十秒だ。百八十秒では即席麺ができるんだよ」
苦笑する宮原へ「動くな」と返す。
頬へ文字を書くと、彼はふふっと笑った。
「気持ち悪い声出すなよ」
「くすぐったいんだもん」
「おれもだ馬鹿。お前さっきからほくろ書きすぎなんだよ」
「なんでほくろってわかるのさ」
「ほくろを書く以外に油性ペンの先でつんつんすることがあるか」
「それもそうか」
ふふっと笑いをこぼす宮原へ「だから笑うな」と返す。
「この部屋ではなに一つ面白いことなど起こってないぞ。起こってるのは地獄だ」
勝ってはいないが負けてもいないのにどうしてこんな目に遭わねばならないのだと腹の中にこぼす。