二回戦目は白い碁石の地が目立った。
「石に細工はしてないか……」
宮原は顎に手を当てて言った。
「細工もなにも、これお前のだろう」
そうなんだけどさと宮原は苦笑した。
「でもなんか、廉くん超能力とか持ってそうな印象だし」
「どんな印象だよ。仮に持ってたとしても遊びには使わない」
「そうかあ……。本当に強いんだね。よし、じゃあ女装という地獄を賭けてカードゲームだ」
「待て、宮原は見たいか? おれの女装」
「廉くんが負けると決まっているわけじゃないでしょう?」
「決まっていないようで決まってるんだよ、カードゲームに関しては」
「違うなあ。決まっているようで決まってないんだよ」
どきりとした。入野の気持ちがわかったような気がした。
カードゲームには必ず負ける――確かに自分の可能性を抑える思い込みだ。
「廉くんはカードゲームに弱いかもしれない。だけどそれと負けることは同じじゃないよ。戦いの途中、僕の身に予期せぬ不運が起こるかもしれない」
宮原は「そう考えると面白くなりそうでしょう?」と口角を上げた。
「さあ、スピードで勝負だよ。名前も思い出したことだし、それを記念した勝負だ」
「スピードだったか、あの手に持ったカードが爆発するやつ」
「スピードにそんなイメージがあるのは廉くんだけだと思うけどね」
宮原は言いながら慣れた手つきでトランプをきった。
「廉くんはトランプきるだけでも爆発するんだろうね」
宮原は手の中でトランプを舞わせながら言った。
「そんなことをしようものなら、四枚ほどのカードが姿をくらませる」
宮原は苦笑し、トランプを一枚ずつ配り始めた。
「罰ゲームは女装。姉さんはこういうことに対してノリがいいから、化粧道具なら快く貸してくれるはずだ」
「待て。ここにはおれたち二人しかいないんだぞ、二人のうち一人が女装してる様子を想像してみろ。地獄じゃないか。どこに需要がある、そんなもの古代に置いてきたろう。宮原、落ち着け」
「落ち着くのは廉くんだよ」
宮原は残りの多いトランプを置いた。
「僕らが賭けて戦う女装は罰ゲームだよ。罰ゲームなんだから、いかに嫌な雰囲気を作るかが重要になってくるじゃないか。
男二人だけの空間で一方が似合わない女装――。たとえ死にかけても避けたい地獄。それほどの罰ゲームを賭ければ、正真正銘の真剣な戦いができる」
「どうした宮原、戦いの緊張感の虜になったか」
「さあ――」
絶対負けないよと言いながら、彼はトランプの配布を再開した。