最後、碁盤には黒い碁石の地が目立った。
「すごい……。僕も弱いとは思ってなかったんだけどなあ」
宮原は言った。
さらに、頭を掻きながら「勝負を仕掛けたあの鋼の精神を讃えてくれ」と苦笑する。
「大丈夫だ、中学卒業までの友達に宮原と同じような名前のやつがいたが、そいつよりはずっと強い」
「そうなんだ」
「やつの口から『今度は勝つ』といった内容の言葉を聞いたのは数え切れない。しかしやつが勝つことは一度もなかった」
「そりゃあ、廉くんほどの腕があれば勝てないよ。廉くん、もうプロにでもなればいいのに」
「弱い幼なじみにも言われたよ。でもなあ……」
「それほど強ければ楽しいでしょうに」
「いやあ……遊び程度だから楽しいんだろう。本気でやったら、いろいろとしきたりみたいなものもあるんだろうし」
宮原はため息のような息をついた。
「廉くん、めんどくさがりじゃなければすごい人なのにね。もったいないよ」
「めんどくさがりか……。親には自己中心的だと言われたがなあ」
「自己中心的……ではないと思うけどな、僕は」
それよりもう一回やってくれないかなと宮原は笑った。
「いいよ。望むなら手加減もしてやる」
「いや、それは要らないよ。あとでカードゲームにも付き合ってもらうから」
罰ゲームがなければやらないこともないと返すと、じゃあ女装にでもするかと宮原は笑った。