「……廉なに、まじで動物と話せたりするわけ?」

「話せるなんて素敵な能力は持ってないよ。ただ、意識を集中させると、なんとなく動物たちの思いがわかる気がするんだ」

「……それは合ってるのか?」

「良かれと思ってやったことを理由に動物たちを怒らせたことはない」

「動物が怒ってる理由もわかるのか」

「こっちがなにかやったあとに怒ってるなら、たぶんそのこっちがやったことが理由でしょう。そういうことはなかったよ、今まではね」

「へえ……。なんか廉、すごいな」

「ただの動物好きだよ」

おれはそうは思わねえけどなと宮原は苦笑した。


猫の名前はどうするかと考えているうちに、母親の黒い車が来た。

「黒い車が黒い猫を連れて行くのか」

笑いながら言う宮原へ、「偶然だよ」と同じように返す。

母親はすぐにペット用のキャリーバッグを手に降りてきた。

「おお、ミヤハラくん? いつもありがとうね」

「いや、全然っす」

緊張したように返す宮原へ笑顔を返し、母親はキャリーバッグを地面に置いた。

「この猫さんね、すごいかわいいね」

「でしょ? なんかすごく惹かれるものがあってね」

「ほうほう」

おいでおいで、と母親が呼ぶと、黒猫は時間を掛けてキャリーバッグへ入った。

「じゃあ、猫さんのストレスにならないように早く帰ろう」

宮原に改めて礼を告げ、母親は黒猫とともに車に乗り込んだ。

おれは宮原に「こんなところでごめんね」と告げ、「また明日ね」と手を振って後部座席へ乗り込んだ。