「方法はいくつかある」
放課後、入野あかねと二人の教室でおれは言った。
「今思いつく限りでは五つだ。
一つ、家族を黙らせてから正式に写真家を目指す。
二つ、家族にはなにも告げずに密かに写真家を目指す。
三つ、今はなにもせず、会社を継ぐ頃になって抗う。
四つ、好きな時期に家を出る。
五つ、六人姉妹それぞれにいるという尽くす者を味方につけ、その人に闘ってもらう」
入野あかねは苦笑した。
「どれもこれも非現実的ね」
「そうか? むしろこれら以外は不可能だと思うが。じゃあこの提案に対する入野あかねの考えを聞こう」
入野あかねは深く呼吸した。
「一つ目、家族を黙らせてから写真家を目指す――。まず、家族が黙るはずがない。
二つ目、家族には秘密にして写真家を目指す――。ばれないはずがない。
三つ目、会社を継ぐ頃に抗議――。もはや紫藤がどうしてこれが可能だと思ったのかが不思議。
四つ目、家を出る――。昨日にも言ったとおり、しばらくの野宿の末に死ぬだけ。
五つ目、家にいる者の中で一人味方をつくる――。これは比較的可能性が高いように思えるけど、わたしと同じような考えを持つ人なんて家にいないわ」
おれはため息をついた。
「どれもこれも言い訳がましいな」