「……わたしは、頼れる人が好きだよ。だから男は……守りたくなるような子を好きになりがちなんじゃない?」
「頼れる男なあ……」
おれは言いながら背もたれにもたれた。
「あまりいなくないか、頼れる男って。少なくともこの学校には」
「わたしはそんなことないと思うよ」
「へえ。でもこの学校なんておれが入れる程度だぞ。どいつもこいつも勉強だけはそれなりにできるようなやつなんじゃねえの?」
入野あかねは「どんな偏見よ」とおれの脛を蹴った。
「だからこれ痛いんだって。入野あかねの趣味はおれの脛を蹴ることか」
「なんかその反応が面白くて」
「嗜虐性極めてんじゃねえか。どこでそんなもの発揮してるんだよ。もっと貴様自身の役に立つようなところで使いやがれ」
「それが紫藤の反応を見ることよ」
「この大馬鹿者が」
ふははと楽しそうに笑う宮原へ、何一つ面白くないしと返す。