「で、宮原くんは紫藤のピアスの秘密って知ってる?」

「ああ、うん……。外すと胸痛に襲われるだとか」

「そうそう。それでね――」

おれは楽しそうに宮原へ近づく入野あかねの脛を蹴った。

「痛いなあもう……」

「喜べ。蹴ったのは軽くだ。日頃貴様がおれに与えている痛みの四分の一くらいだ」

「馬鹿。男の軽くは女の全力よ」

「うるせえ。再度蹴られたくなければ口に糊でも塗っとけ」

「なに怒ってるのよ。らしくないなあ」

「ちょっと待って」宮原が言った。

「二人……どんな関係? 僕、ここにいて大丈夫かい?」

入野あかねは小さく笑った。

「むしろ、宮原くんにはここにいてもらわなくっちゃ困るわよ。実際……紫藤とは友達なんだもの」

ねえと共感を求める彼女の声におれは頷く。

「へえ。なんか面白い感じになってるのかと期待したんだけどなあ」

「恋愛に興味があるなら自分が恋しろ」

「恋かあ……」

人を好きになるってどんな感じなんだろう、と宮原は呟いた。