公園には誰もいなかった。
入野あかねと座ったベンチに腰を下ろす。
ここへ向かいながら、母親の携帯電話へ「友達と遊ぶから帰りが少し遅くなる」といった内容の文章を送信した。
「了解。迷惑はかけないでね」と返ってきた。
何気なく携帯電話を開いた。
未読の受信メールがあり、確認すると入野あかねからだった。
数分前に受信したその内容は「お父さんが出掛けているようで、少し時間掛かるかもしれない」というものだった。
画面を切ろうとしたとき、入野あかねから新たなメールが送られてきた。
内容は「なにかあったらわたしに連絡ちょうだい。警察よりは頼れる人が向かうわ」というものだった。
直後、さらにメールが届き、本文には父親の帰宅を知らせる文字が並んでいた。
ずいぶんと器用な女だなと思いつつ、「警察よりも頼れる者がいるとは心強い。急ぐ必要はない、ゆっくりでいい」と返信する。