「それでさ、紫藤 廉」
入野あかねは甘そうなパック飲料を飲んだあとに言った。
「なんだ」
「……本当に、念じてくれるの?」
「ん?」
「わたしの将来が……変わるように」
「いいや、念じないよ。昨日も言ったろう」
入野あかねは自身の手元を眺めていた目線を上げた。
丸い目がおれを見つめる。
「どうして? 助けてくれるんじゃなかったの?」
「ああ」
「は?」
おれは売店で購入した緑茶を一口飲んだ。
「言っただろう。入野あかねの敵は親だ。親くらいなら、おれが出て行かなくてもどうにかできる」
「……できないよ。できないからわたしは、紫藤 廉に……」
入野あかねは呟くように並べ、うつむいた。
「紫藤 廉は神様なんでしょう? だったら――」
「神様はすぐには力を貸さない。なに気持ち悪いこと言わせてんだ」
本当の神様はそうだよねと入野あかねは呟いた。
「だけど紫藤 廉は、人間に限りなく近い神様で、神様に限りなく近い人間じゃない」
「成長しないぞ」
入野あかねはゆっくりと顔を上げた。