昼休み、おれは一人で惣菜パンをかじった。
宮原は欠席した。体調が優れないとの理由だった。
ふと、甘そうな菓子パンが机に置かれた。
入野あかねだった。
「悪いが、おれはそこまで甘いものは――」
「馬鹿」
入野あかねはおれの言葉を遮り、そばに寄せた椅子へ腰を下ろした。
「貸しを作るのは好きだけど借りを作るのは嫌いなのよね?」
「ああそうか」
「忘れてたの?」
「半分」
最悪、と言いながら入野あかねは菓子パンの封を開けた。
「入野あかねって甘いもの好きなんだな」
「意外?」
「まあ」
「……なにが好きそうに見える?」
「さあ。食事をしている場面が想像できなかったからな。凡人は見たこともないようなものをほんの少量食べてそう」
「なによそのイメージ」
「それくらいの不思議ちゃんってことだよ」
「へえ。紫藤 廉も結構な変わり者だけどね」
「ふうん」
ふうんって、と入野あかねは小さく苦笑した。