「偶然、なのかな……」
「必然だとでも思うわけ? 本気なら、病院に行った方が――」
「冗談だ」とおれは入野あかねの言葉を遮った。
「それならよかった」と入野あかねは真面目な表情で言う。
「それで、神ちゃんを腕の中で看取ることができなかったら、神ちゃんは紫藤 廉の中に残ることはできなかったわけだし、
紫藤 廉の中に残ることはできたとしても、あなたが友達とのカードゲームに完敗してピアスホールを空けられていなかったら、
神ちゃんが中に残っていることに気づくことはできなかった。
さらに、神ちゃんがあの神ちゃんじゃなかったら、紫藤 廉の中に残ってあなたがピアスホールを空けられていたとしても、
あなたに神であるという自覚は芽生えなかったかもしれない。もしも芽生えたとしても、完全に中学校二年生程度で頻発する病であったはず。
つまり、あの黒猫ちゃんを神社で拾って神ちゃんとして家族にし、
腕の中で看取り、友達にカードゲームで完敗してピアスホールを空けられなければ、
紫藤 廉は今、念じたことを実現させる不可思議で便利な能力のようなものは得られなかったと」
「なんだか貴様はカードゲームの件をいやに強調しやがるが、確かにそのとおりかもしれないな」