どれほど待っただろうか。

ずいぶんの間を静寂に包まれていたように思う。

何度目かに乾いた強い風に前髪を掻き揚げられた頃、黒猫は姿を現した。

「きた」

おれは声を上げた。

「黒猫」

前方を指で示すと、と宮原は「ああ」とつまらなそうな声をこぼす。

「宮原は本当にこの黒猫に興味がないね」

「反対になんで廉はそんなに興味あるんだよ」

「なんだか素敵な猫じゃない。かわいさもかっこよさも持ってる。飼われてるわけではないようなのに、ちゃんと自分を持ってるようだし」

「猫に……ていうか動物に自分もなにも――」

「馬鹿」

思わず宮原の声を遮った。

「動物にだって感情も自我もあるよ。動物だって人間と同じなんだ。反対に、人間だって動物の一種なんだよ」

「いや、ごめんごめん。そんな怒らなくても……」

落ち着いて、と宮原は苦笑する。

「おれは怒ってるわけじゃない。ただ、動物を見下すような言葉や人間が大嫌いなだけだ」

「……廉は本当に動物が好きなんだな」

「動物は最高の癒やしだからね。いつかなにかで知ったけど、動物の癒やしは医学的だか科学的にも証明されてるらしい」

「へえ……」

おいで、と手を伸ばして少し待つと、黒猫は静かに寄ってきた。