おれは思い切り息を吸い、ゆっくりとそれを吐いた。

「で、次はおれのくだらない秘密の主体だ。入野あかねはまだ、自分を神だと思い込むおれを精神年齢の幼い空の頭の持ち主だと思うか?」

「そうね」

当然だろうとでも言いたげな声だった。

「じゃあ、おれは数秒後の未来を予言する」

「なになに? 本当に面白い」

こういう馬鹿みたいなの大好き、と入野あかねは笑いながら言った。

「入野あかね――君の目の前にいる馬鹿な少年が、淡い黄色の首輪を着けた黒猫の姿に変身する」

「へええ? ずいぶんと大きな予言ね。わたしがそれを信じるような純粋な子だったらどうするつもり?」

「いいや、むしろ実際の入野あかねのような、こういった分野において汚れに汚れた人間の方がおれとしては望ましい」

「ふうん。やはり黒猫になるなんていうのは不可能なの? そうだとしても、わたしをどう納得させるつもり?」

「まあ落ち着けよ。急いでも幸運は訪れないぞ」

おれは一度深く呼吸をし、左手でピアスに触れた。

「えっ、なに? 黒猫でも呼ぶの?」

入野あかねは口角を上げて言った。

「……はあ?」