「それで、その後に何度か塞ぎたいと思うようになり、その度に挑戦した」
はいはいと呆れたような声が返ってくる。
「しかし、無事にピアスを外すことができたのは二度目のあのときだけ、あの機会を逃したおれは、以来どれだけ望もうともピアスを外すことはできなくなった」
「でも、その謎の胸痛に耐えて意識を保っていれば可能なんじゃないの?」
「いや、意識を失ったのは一度目のあのときだけだった」
「はあ? ならば外せばいいじゃない。またもったいなく感じたとか言うんじゃないでしょうね。そのネタは飽きたわよ?」
「ネタじゃないが、違うから安心しろ」
「ふうん。じゃあ、なんで外せないのよ」
入野あかねはこちらを見つめ、「これか」と呟いた。
「ずいぶんと洒落たもの着けてるのね」
「それはどうも」
「まあ、高校生がこれというのはどうかと思うけれど。もう少し目立たないものにしようとは考えなかったの?」
「一度目の胸痛は偶然だと思ったし。いつでも自由に外せると思ったし」
「そんな幼子の言い訳みたいに言わないでくれる? わたしが悪いことをしているかのような錯覚をするじゃない」
おれが小さく苦笑すると、彼女も同じように続いた。