「で――」
だいたい想像つくわ、と入野あかねは笑った。
「囲碁だけが強い紫藤 廉は見事そのゲームに完敗、ピアスホールを空けさせられたのね」
なんとなく悔しく感じ、おれは「残念」と返した。
「ピアスホールは自分で空けたのではない。友人らに空けられたのだ」
細かい男ね、と入野あかねは口をとがらせる。
「そこ以外はすべて入野あかねの言うとおりだ」
「当たってたの、紫藤 廉が負けたということだけじゃない」
「それだけ当たれば充分だ」
「馬鹿にしてるでしょう」
「そんなことない」
へえ、と訝るように言い、入野あかねはペットボトルの蓋を開けた。
「だから開ける前に開けると言えと言ったろう」
「開けたよ」
「うるせえよ。昨日に引き続き、殴られなかったのは幸運だと思え」
「紫藤 廉ってすぐに殴りたくなるのね」
「冗談だよ馬鹿」
話が進まねえ、とおれは目元を覆って項垂れた。