「そして、神が腕の中で眠ってから少し経った頃だ。なにゆえか、神様という存在を近くに感じるようになった。同時に、自分にはいかなることもできてしまうという感覚も芽生えた」
「ふうん。黒猫ちゃんが亡くなったのと、発症が偶然にも重なってしまったのね。現実逃避のようなものだったのかしら」
「さあな。まあ好きなように思っていろ。
やがて、神様の存在を近くに感じるというものと、自分にいかなることもできてしまうという感覚は繋がり、自分が神であるという感覚を生んだ」
入野あかねは小さく噴き出した。
口元を隠してふふふと笑う彼女へ、お前いい加減に耐性作れよと返す。
「そんな頃だった。二人の友人とともにカードゲームをやる羽目になった」
「羽目――というと、紫藤 廉はカードゲームが嫌いなの?」
「ああ。おれが好きなのはボードゲームだ。特に囲碁。過去に負けた経験はほとんどない」
おれの自慢話はいいんだと挟む。
「そのカードゲームをやる前、一人の友人が提案した。『負けたやつ、ピアス空けねえ?』などというふざけたそれを」
ほう、と入野あかねは静かに相槌を打った。