大人たちは、方々への連絡やら手配等に追われていて、忙しく動く足音がしたと思ったら、時には一斉に静まりかえる。台所でお茶でも飲んでひと休憩しているのかもしれない。
子どもたちは、とっくに夢の中だ。泣き疲れたりたり、遠方から急遽やって来た疲労に負けてしまった。みんな小学生以下だから、そうでなくとも眠らなければいけないけれど。
このような状況下において、大人と子どものどちらにも分類されにくい私は、とくにすることもない。さっきうたた寝をしたあとは目が冴えてしまい、おばあちゃんと一緒にいたいのもあってこうしてここにいる。誰かがそうしていなければいけないらしく、役を買って出た。
なので今、この仏間にはおばあちゃんと私のふたりきりだ。
厚着をしていても寒い。お通夜はタイツを履いてもいいものか。高校の制服のスカートは膝上丈だから。ああでも、斎場は空調が効いているか。
散々泣いて、うたた寝もしてしまった脳内は今は冷静で、そんなことをなんとなく考える。
ずっと悲しめない私は白状なのだろうか。大好きな大好きなおばあちゃんが亡くなってしまったというのに。
孫の中で唯一の女の子だった私は、おばあちゃんからいっとう可愛がられていたように思う。覚醒遺伝なのか、おばあちゃんに似ている容姿の特長が多くあり、それをとても嬉しがってくれていた。
おばあちゃんは若い頃とても綺麗だったのよ、だからあなたも軽薄な男には気を付けなさい――誇らしげに言うおばあちゃんに笑った幼い夏の日を思い出す。おじいちゃんを早くに亡くしたおばあちゃんにプロポーズしてくれた人のことを教えてくれたこともあった。誰にも秘密よ、と。
一年前、入院中のおばあちゃんを見舞うとそのときのとことを口にし、その秘密に加えてもうひとつ、おばあちゃんは私にその証を上乗せした。
それを、私に託しながら。