私とおばあちゃんの思い出話は、遮られることなく紡ぐことが出来た。
そうして、男の人がようやく口を開く。
「――そうか」
おばあちゃんが、ずっと私たちと一緒にいてくれて本当に良かったと思う。
その人を選んでいれば、こうして見送ることも、たくさんの満ち足りた思い出もなかった。おばあちゃんだって幸せだと言っていた。その言葉に嘘はなかったと思う。
選択肢の違った、おばあちゃんのいない"今"なんて考えたくもない。
だけど……。
「その男の人は、寂しかったよね。きっと絶対におばあちゃんを大切に想ってくれて、愛してくれていて。……おばあちゃんのいない男の人のそれからは、大丈夫だったのかな。寂しくて寂しくて、死んでしまいたくなってしまっていたら」
男の人の幸せを、私たちは確実に与えなかった。
「私たちは幸せだったけれど、その人は……。おばあちゃんを渡さなかった私たちを、おばあちゃんの腕の中で眠っていた私を恨んでるのかな? そしたら、おばあちゃんの気持ちをきちんと伝えられないかもしれない。そんなのは、嫌だ」
そうして、私は手の中にある宝石のような球体を、隣にいる男の人の手をとり握らせる。大きな手は、私のする行為を咎めることはしなかった。
「これを返して、おばあちゃんの気持ちを代弁する。――私のしていることは、ちゃんとおばあちゃんの心を伝えられているのかな……」