正反対の性格の二人。

 ユキにはまるでトイラが気ままな猫で、キースが人懐こい犬に見えた。

 ユキは怖いもの見たさなのか、暫くトイラから目が離せない。

 こちらが話しかけようとしているのに、わざと無視して焦点も合わさず前をじっと見つめるトイラ。

 態度は荒々しく、きついのに、その緑の目だけは魅了されるほど美しい。

 ユキはその目の色だけは素直に好きだと思ったそのとたん、何かがひらめくように記憶が一瞬フラッシュする。

 簡単に言ってしまえばデジャヴュー。

 でもそれは流れ星が消えゆくようにすっとなくなった。

 知っているのに思い出せなかった記憶。
 あいまいな跡だけが残されていた。

 ユキはどうしてもそれが何だったか思い出したかった。
 このままでは中途半端で頭を掻き毟りたいほどに気持ち悪い。

 トイラの緑の目を傍でよく見ようと少し近づく。やはり美しい緑の目。魔力を帯びたようにユキを釘付けにする。

 ユキは我を忘れて身を乗り出して近づいていく。

 突然トイラが睨みをきかせてユキに視線を合わせた。
 その時恐ろしいほど近くにトイラの顔があった。

 我に返ったとき、ユキは触られたカタツムリのように慌てて体を引っ込める。
 何をしてたんだと、自分でも急に恥ずかしくなり、その後ずっともじもじと下を向いていた。

 トイラはふんっとわざとらしく窓に顔を向けるも、その表情は悲しく、ユキに気づかれないようにひっそりとため息をついていた。