小さな神社の鳥居がぼやけるように物悲しく目に入ってくる。

 ユキの家もこの神社を通り過ぎて角を曲がって坂道を上がればすぐそこだった。

「もう、ここでいいよ。家はすぐその上にあるんだ。かなり迷惑かけちゃったね。でもすごく助かったわ。ありがとう」

「折角だから家まで送るよ。いいんだよ、これぐらい。僕も春日さんと話が出来てすごく楽しかった。あのさ、春日さん……」

 仁はこのチャンスを逃したくなくて、真剣な面持ちでユキの目を見つめた。

「実は僕、ずっと前から春日さんのことが気になっていてね、それで……」

 そのときだった。
 トイラとキースが神社の林の暗闇からすっと現れた。

 ユキも仁もドキッとして驚いていた。

「コイツ ダレ?」

 仁に向かって、トイラが睨みを利かせる。

「この人は隣のクラスの新田君」

 ユキが紹介するが、トイラは仁に近づいて、匂いを嗅ぎながら因縁つけている。

「ナンノ ヨウ ダ」

「ちょっとトイラ、何してるの。失礼でしょ。新田君は荷物を運ぶのを手伝ってくれたの。一緒に買い物行こうって頼んでもトイラはどこかに行ったくせに」

「ヨウジ ガ アッタ。シカタナカッタ」

 トイラの前でユキはなんだか素直になれず、すねていると仁が派手にくしゃみをしだした。

「ハックシュン! ハックシュン! あっ、ごめん、なんか急にくしゃみが出ちゃって。あっ、また…… ハックシュン!」

 仁はくしゃみを連発すると、恥ずかしそうに指で鼻の下をこすっていた。

 辺りをキョロキョロと見回している。