もじもじと恥ずかしそうに仁は微笑んでいた。

 反応が鈍く、ただ突っ立って愛想笑いもないユキに仁は焦ってへらへらしてしまう。

「突然、声かけてごめん。なんか荷物重そうだったから、手伝おうかなって思って」

 ユキが両手で持っていたパンパンに詰め込まれていたスーパーの袋に、仁は視線を向けた。

「えっ?」

 話した事がない人から突然声を掛けられて、ユキは戸惑い、どうしていいかわからない。

「ほら、ひとつもってあげる。貸して」

 仁がユキの荷物に手を伸ばしてくるから、断れずにユキはそれをあっさりと渡してしまった。

 仁は自転車のハンドルに引っ掛けるようにしてそれを持った。

「少しは楽になった?」

「あっ、ありがとう。でも私の家、ここから遠いよ」

「僕、自転車だから全然問題ない。それより、こうやって話ができることの方が嬉しいかな」

「はぁ……」

 ユキはどう答えてよいのかわからず、息が漏れたような曖昧な返事をしていた。

 ふたりは歩道を並んで歩き出す。

 夕方に近いこの時間帯は、日差しも柔らかく暮れかけていた。

 仁はユキをちらちらみながら、上手く話せなくてモジモジしている。

「なんか僕、突然声かけて迷惑だった?」

「ううん、そんなことない。荷物運び手伝ってくれてるし、こうやって声を掛けてくれて嬉しかった。ほら私ってクラスで嫌われてるから」

 ユキも落ちつかず間が持たなくて余計な事を口走った。