案の定、キースを狙っている女子生徒達からは、もうすでに挑戦状を叩きつけられているのか、鋭い視線を受けていた。

 村上先生が教室の後ろに座るユキの席を指差している。
 ユキはそのとき初めて自分の両隣が空いていることに気がついた。

 どうしてそんなに上手いことその場所が空いているのだろうとユキは首をかしげた。前日まではこんな席だっただろうかと思い出そうとすると、頭が一瞬ズキッとする奇妙な感覚を覚えた。

「あれ?」

 疑問を抱いてもゆっくりと考える時間も与えられぬまま、ユキの左側ちょうど外が眺められる窓際の一番角の席、そこにはトイラが座り、反対の右側に はキースが座った。

「ユキ …… ヨロシク」

 キースが様子を窺いながら、笑顔で親しみを込めて話しかける。
 ユキは適当に愛想笑いを返した。

 そのユキの態度はキースには物足りないのか、寂しげに眉を下げた。

 だが仕方ないと諦めたように、首を縦に振ってはうんうんと一人で納得するように頷いて、にこやかに接しようとする。

 その態度でユキが感じたキースの第一印象は『変な人』だった。苦手なタイプかもしれないと、ユキは顔を背けた。

 次にトイラに視線を移した。

 一応、義理でも挨拶すべきだろうかと、目だけでも合わせておこうと顔を覗き込んでみた。

 窓際に座ったトイラはユキを完全に無視しようとしているのか、全くユキに視線を向けなかった。

 しかしそれはどこか不自然だった。

 却ってユキを意識して、本当は見たい気持ちを抑え、我慢するかのように葛藤していた。

 トイラは最後までユキを見ようとせず、意地になった苛立ちから足を小刻みに揺らしていた。
 落ち着かないその態度が神経質そうだった。