甘ったるい舌足らずな声。かわい子ぶっている。

 恥ずかしさを隠すためにわざとそんな態度になったのかもしれない。

 友達――。

 ユキには不思議な響きに聞こえた。

「うん、いいよ?」

 自分でもどのように答えていいのかわからない。
 だけどこの雰囲気を壊せなかった。

 ユキは突然のことに戸惑うも、微笑んであいまいに受け入れてしまう。

「良かった」

 ミカは素直に喜び、その勢いでトイラに話し掛けた。

「ハーイ、トイラ」

「ハーイ」

 意外にもトイラは素直に返事する。

 ミカはたどたどしい英語を交えてトイラとしゃべり出した。

 トイラはミカを見つめ、首を動かし相槌をうって相手をしている。

 先ほどまでほんわかしていたユキだったが、急に冷えた空気を感じ心の温度も下がっていた。

 自分が出汁にされたように思えた。

「春日さん」

 ミカがユキの手を取った。表情が暗くなっていたユキは慌てて取り繕った笑顔を浮かべた。

「すごいわ」

 ミカが感心している。

「えっ?」

「料理が上手いんですってね。トイラが言ってた」

「まあ、作るのは好きだから」

 ふたりが何を話しているのかまでユキは訊いていなかった。

 自分がこの時トイラに近づく女性にもやもやしていたなんて――。

 ユキは意味もなく焦ってしまう。

 自分でもこの気持ちがなんなのか、よくわかっていなかった。