「ほら、すぐこれだ。ユキも気にしないで」

 キースは慣れっこだから軽くあしらえるかもしれないが、ユキは昨晩見た笑顔のトイラが忘れられなくて、このギャップの激しさに戸惑っていた。

 どっちが本当のトイラなのだろうか。

 黙々と用意された朝食を食べているトイラ。

 どうしても嫌いになれないものがあった。 
 

 学校の通学途中、トイラはひとりで前を行く。

 ユキとキースはある程度の距離を取ってトイラの背中を見つめ、肩を並べて歩いていた。

「トイラがあんな調子だけど、ユキは萎縮することないからね。いつもの調子で絡んだらいいから」

「もしかして、私は嫌われてるの?」

「まさか。その逆」

「えっ?」

 ユキはびっくりしてキースを見上げた。

「今はどうしようもないけど、そのうちユキもトイラの本当の気持ちがわかるんじゃないかな」

「本当の気持ち? そのうちっていつ分かるの?」

「それは、突然やってくるのかも……」

 キースは心配そうにユキを見つめた。

 そして思案しながら質問する。

「最近何か変わったことなかった?」