スズメの襲撃事件は、トイラを落ち込ませ、朝、キッチンで朝食を準備するユキと顔を合わせないまま、トイラは静かにテーブルについていた。

 目玉焼きを焼いていたユキは、振り返ってその姿を見て気持ちを入れ替えた。

 焼きたての目玉焼きをフライ返しですくって皿にのせ、それをトイラの前に静かに置いた。

 トイラは虚ろにしばらくそれを見つめていた。

「昨晩のことは気にしてないから」

 ユキはさりげなく声を掛ける。

 トイラも何かを言おうと顔を上げたが、ユキの屈託のない笑みが却ってトイラを苦しめた。

 不安定に心揺れ動くトイラは、自ら嫌われる事を選んでしまった。

「そのことはもういい」

 トイラはユキから目を逸らす。

 そっけないそのトイラの態度にユキは悲しくなっていた。

 またトイラが自分から距離を置いた。

 どうしてそうなるのか、ユキにはわからなかった。