朝、襲ってきたカラスがやって来た方向に焦点を当て、トイラとキースは、人目を気にしながら目星をつけた山に向かっていた。

 あまり人が入り込まない森に足を踏み入れたとき、トイラは違和感を覚える。

 あまりにも静かな森の中、動物たちの気配が消えている。

 簡単に部外者が入り込むのを許しているように思え、何か不自然だった。

「何か感じるのか、トイラ」

 キースは困惑しているトイラの表情を見つめた。

「この森は機能していない。主が眠りについている」

「でもここは、僕たちの森とは違うし、そういうものなんじゃないのか」

「それはおかしい。俺たちや、もっと敵意を持った奴が入ってきたんだぞ。警戒心があって当たり前だ。それなのにまるで……」

 トイラは信じられないとばかりに言葉が詰まった。

「まるで、なんだ?」

「自由に使ってくれと提供されてるみたいだ」

「はっ? そんな馬鹿な」

 キースにはそこまで読み取る力がなかった。
 トイラが特別な能力で力を発揮するのはあの緑の目にある。

 今更ながらその目を見つめた。