「あら、ひとりでお帰り? 家来たちはお供じゃないのね」

「家来? トイラとキースの事をそんな風に言わないで」

「だけど、トイラにお姫様抱っこされて保健室に行ったじゃない。キースも引き連れて」

 気絶した後のことはユキには全く覚えがなかった。

「朝も抱っこされてたしね」

「ほんといい気なもんよね」

 マリの隣に居た女子たちも口を挟んだ。

 ユキはぐっと息が詰まり、手紙の文面が頭に蘇った。

『いい気になるな』

 無性に怒りがこみ上げてきた。

「私がそうさせたと思うなら、それでいい。それよりもあんな紙切れを机の中に入れて知らせなくても、私に文句があったら堂々と言えばいいじゃない」

「えっ、紙切れ? なんのこと?」

 マリが傍にいた友達を見回して確認する。みんな知らないと首を横に振っていた。

「机に入れたの、矢鍋さんでしょ」

「えっ、私が? ちょっと変な言いがかりはやめてよね。そんなかったるい事、私がすると思ってるの? ばっかじゃない。文句があったら私いつもあんたに堂々と言ってるわよ。今だってそうしてるし」

 言われてみればそうだった。ユキはマリの言葉に簡単に納得してしてしまう。

 犯人はマリじゃない。

 そう思った時、勝手に決め付けた事が恥ずかしくなり、「あっ、ごめん」と咄嗟に謝ってしまった。