昼休み、ユキが用意していたお弁当をキースに渡すと喜んでくれたが、トイラは不機嫌に手にした。

「気にらなかったら食べなくていいから」

 急なことで、お弁当は大したものは作れなかった。

 卵サラダを挟んだだけのサンドイッチ。
 見るからにがっかりだろう。
 
 案の定キースは中身をみるなり「エー、コレダケ?」と不満を漏らした。

 それを聞きつけた女子生徒が、自分のお弁当を持って集まり出し、おかずを分け与えていく。
 キースは素直に喜び、特にから揚げやソーセージを美味しそうに食べていた。

 トイラは何も言わず、サンドイッチを口にする。
 あっという間に平らげて、机に突っ伏していた。

「今日、買い物に行って、明日は、ちゃんとしたもの用意するから」

 サンドイッチを咀嚼しながらユキは呟く。

「ユキ ガ ツクルナラ ナンデモ オイシイ」
「えっ?」

 聞き返したとき、トイラは突っ伏した顔の向きを窓側に寄せていた。

 空は柔らかいブルー。
 薄っすらと引き伸ばした雲が覆っている。

 遠くの山の稜線がぼんやりと見え、のどかな風景だ。

 朝の襲ってきたカラスのことなどすでに忘れられ、昼休みはざわめきの中、いつものように過ぎていった。