「I am Toyler」

 転校生の一人が英語で『俺はトイラだ!』とぶっきらぼうに叫んでいた。

 すらりとした長身。
 青みを帯びたつややかな黒髪。
 肌は日焼けした小麦色。
 エメラルドのような緑の瞳。

 野生的で美しいがそれは清涼さと非情さを同時に持ち合わせているようにも思えた。
 冷たく悪びれた態度でクラスに鋭く睨みを利かす。

 まるで野獣にでも睨まれているかのごとく見るものを居心地悪くさせた。
 顔は整い、かっこいいはずではあるのに、冷酷さが際立ってクラスの印象は悪かった。

 自分の名前だけ冷然に言うと、後は面倒くさそうにプイっと首を横に一振りし、不機嫌さをあらわにしていた。

「この子はトイラという。出身はカナダだ」

 村上先生は顔を引きつらせ、気を遣ってフォローをいれる。

 これは先がやっかいだとでも言わんばかりに苦笑いしながら、もう一人に手を差し出して自己紹介を促した。

 そして先ほどのトイラとは違う空気が流れ、その場が和らいだ。

「ボク …… ハ キース デス。カナダ カラ キタ。 ヨロシク」

 キースはたどたどしいながらも日本語が話せた。
 トイラと違ってにこやかでうらうらとした笑顔を振りまいている。

 こちらもすらっと背が高い。
 髪は少し長めだが、白銀に近いプラチナブロンドが輝いている。
 白い肌、ブルーの目。
 洗練された気品があった。

 まるでそれは王子さまのようで、女子生徒はその美しさに魅了され、目がとろんとしていた。