「ユキ、大丈夫か」

 目覚めて間もないユキは混乱して、訳がわからないでいた。

 見慣れない部屋でベッドに横になっている。そして自分を心配している人が目の前にいる。

「私、一体……」

「うなされていたけど、どこか痛いのか」

「うなされていた?」

 ユキはハッとして起き上がり、布団を跳ね除け、自分の体を確かめる。
 どこも血はでていなかった。

 ユキが何かを言いたげにトイラを見つめる。

「血が……」

 そこまで言いかけたとき、ベッドの周りを囲っていたカーテンがシャーと音を立てて、目の前の視界が広がった。

 白衣を着た女性がユキを覗き込んで話しかける。

「気がついたみたいね。どれどれ」

 血圧器を手にしてユキの腕に巻きつけ測りだし、手際よく操作していた。

「ただの貧血だと思うんだけど、教室にカラスが入って襲ってきたら、そりゃびっくりするわよ」

 沢山の生徒の面倒をみるだけあって、親しみやすい気さくな感じの保健の先生だ。

 横で心配そうに様子を窺っているトイラにも微笑んでいた。

「だけど、こんなかっこいいふたりに運ばれて、ちょっと羨ましいわ」

 余計な一言に、ユキはうつむいて黙っていた。