その一方で、クラス中が注目しているというのにひとりだけそっぽを向くユキのしぐさは、このふたりの関心をすぐひいた。

 ふたりは慎重な面持ちでユキを見つめる。
 クラスがまだ唖然として戸惑いを見せている中、村上先生は思案しながら再び声を発した。

 「えー、見ての通り彼らは外国人だ。この高校に留学生としてやってきた。日本にはまだ慣れていない。それじゃとりあえずまずは自己紹介をしてもらおうか。えー、プ、Please introduce yourself」

 英語を話すとき声が一瞬上擦ったが、村上先生の専門は英語だ。
 多少は話せるところを強調したくて、少し力みすぎてしまった。

 他の教師よりは英語が話せる分、それを考慮してふたりはこのクラスに割り当てられたのかもしれないが、もうひとり都合のいい生徒がこのクラスにいる。

 それが春日ユキだった。

 ユキが感じた嫌な予感はこの二人の面倒を押し付けられるのではと危惧したことだった。
 それが自分にとても都合の悪いことでもある。

 その瞬間、ぞっと悪寒が走っていたたまれなくなり、ユキは耐えるように無意識に膝元で強くスカートの裾を握り締めた。

 そしてクラスの静けさを破って、荒々しい声が耳にはいってきた。