「僕、待つよ。ずっと待つよ。ユキがトイラのことを思い出しても苦しくなくなるまで。ずっと待つ。だってこの世界で僕だけが、ユキの大切な思い出を理解できるんだもん。僕は忘れないよ。トイラやキース、そしてジークのことだって。僕には大切な友達、そしてかけがえのない思い出。ずっと胸に抱いていたい。きっと大人になったとき懐かしんで、宝石のような輝いた思い出となってると思うんだ。大切なことから逃げちゃだめだ。過去があるから未来へと続く。これからのユキには今まで経験したことが絶対必要だったって思えるときが来るよ」

「仁……ありがとう」

「ユキ、君なら乗り越えられる。トイラと共に。だってトイラはいつも君の傍にいるんだろ? そうじゃなかったかい?」

 仁に言われてユキはトイラの言葉を思い出した。

『どこにも行かないさ。俺は君のすぐ傍にいる。すぐ傍に』

「うん。そうだよね。私はトイラと共に生きてる。この思い出と共に、いつもトイラはここにいる」

 ユキは胸を押さえる。

 自分の心臓の鼓動が体で響く。

 これはトイラの鼓動の音でもある。

 一緒に生きている。

 ユキの目からまた涙がこぼれてきた。

 でも、それは悲しさの涙ではなかった。

 トイラと共に生きる喜びの希望の雫のように、キラキラと美しい水玉が落ちていった。

 仁はちょっと大げさだったかなと恥ずかしげに笑っていた。

 だけど、それなりに悩んで出した答えだった。

 仁も本当は、黙ってあの銀の粉をユキに振りかけてやろうと、何度思ったことか計り知れない。

 捨てたことをユキに伝えると、ユキはそれでよかったと頷いてにっこりとした。

 仁の前向きな姿勢はユキにひしひしと伝わった。

 ユキは仁に心から感謝するとぎゅっとハグをした。

 突然の柔らかな感触に、仁の動きがとまり、顔が赤くなる。

「仁、早く良くなってね」

「ああ、でもまた熱出たかもしれない」

 仁はバタンとベッドに倒れてしまった。

「やだ、仁、大丈夫」