「過去を見るのは辛すぎる。この後には別れがあるのに。どうして私は過去を見せられているの。これは何が言いたいの」

 目の前には自分と楽しく過ごすトイラの笑顔。

 ユキはそれにすがりつきたくなった。

「トイラに触れたい」

 過去のトイラの姿に近づき抱きつこうとするが、すっと体を通り抜けて、つかめなかった。

「嫌、トイラ、お願い今の私を見て。そして側に居て」

 過去のトイラは、そこに居るユキが見えていない。

 しかし、過去のユキを見て楽しそうに笑っていた。

 それが自分なのに、現在の自分じゃないことが悔しい。

「どうして、こんな辛いものを見せるの。誰がこんなことをするの」

 ユキは気が狂いそうになった。

「トイラ、トイラ!」

 どんなに呼んでも、過去のトイラは現在のユキの方を見ない。

 自分の胸に手を当てて、トイラを感じようと努力してもトイラは側には来てくれなかった。

「トイラの命の玉が私の体にあるのに、どうして私はトイラのことを感じられないの。こんなにもトイラが必要なのに。こんなにも愛しているのに」

 気がつくとまた大木の前に居た。

 ユキはこの木をじっと見つめる。

 答えが欲しいとそっと木に抱きついて目を閉じてみた。

 すると、今度は自分の知らない映像が見えだした。

「えっ? これはトイラの記憶?」