「だって昔からそうなんだもん。いつもパパが決めたことで私は振り回されて、日本に戻ってきたのも突然パパが言い出したから。本当ならずっと向こうで暮らしたかったくらい。でもパパが望んだから私はいつもその通りにするしかなかった。今回も何を言ったところでもう仕方がないわ。最初から教えてくれてたら私 だってちゃんと快く賛成したのに。こんなにも嫌な気持ちになることもなかったはずだわ」

「そっか、ということは、僕たちがここに居てもユキは大歓迎ってことだね」

 キースはウインクした。

「ん? あーちょっと待って、だからそれは……」

 ユキはそこで素直になれなかった。

「なぁ、そろそろ学校に行かないと遅刻するんじゃないのか」

 トイラは壁に掛けてあった時計を指差す。

「うわー、もうこんな時間。これじゃ完全に遅刻よ」

 ユキが慌てている傍でキースもトイラも落ち着きを払っていた。

 遅刻をすれば、また注目を浴びてしまう。

 このふたりを連れ、遅れてクラスに入れば何を言われるかわからない。

 でも走れば少しの遅刻で済んで最小限に留められるかもしれない。

「ほら、あんたたちも走るのよ!」

 玄関を施錠したあとは切羽詰ってユキは一目散に走り出す。

 ユキの走っている様を見たキースはトイラと顔を見合わせた。

「ちょっと本気出しますか」

 にやりと笑みを浮かべてキースも走り出す。

 それは風のように、すでに前を走っていたユキの脇をビューンと駆け抜けていった。

「えっ、嘘」